交通事故後の握力低下は、「物を握りにくい」「持っていた物を落とす」「手に力が入りにくい」といった変化として気づくことがあります。握力低下は特定の病名ではなく、神経や筋肉、腱、関節などの状態を確認する必要がある症状です。
首の神経根や脊髄、肩から腕に向かう神経が影響を受けている場合のほか、手首や指のけがによる痛み・腫れで十分に握れない場合もあります。「むち打ちによるもの」と決めつけず、首から手指まで評価することが大切です。
握力には利き手や年齢などによる違いがあり、測定時の姿勢や痛みも結果に影響します。左右の数値だけでなく、事故前と比べた変化、しびれの有無、日常動作での困りごとを合わせて判断します。
事故後に新たに握力が低下した場合は、速やかに整形外科などを受診してください。急な脱力や進行する筋力低下は、施術や筋力トレーニングを始める前に、神経の損傷などを確認する必要があります。
物を握る動作には、脳や脊髄からの指令を伝える神経と、腕や手の筋肉・腱・関節が関わります。事故でどの部分が影響を受けたかによって、力の入りにくさの現れ方や必要な対応が異なります。
首の神経根への影響
事故に伴う椎間板の損傷などによって、脊髄から枝分かれする神経根が圧迫・刺激される場合があります。影響を受ける神経によっては、首から腕への痛みや手指のしびれに加え、握る動作に関わる筋肉の力が弱くなることがあります。
頸髄の損傷
首の部分の脊髄である頸髄が損傷すると、手や腕の筋力が低下する場合があります。骨折がなくても起こることがあり、足より手や腕の症状が強く出る場合もあります。歩けることや、首の痛みが軽いことだけでは否定できません。
腕神経叢や末梢神経の損傷
事故で首と肩が強く引き離されるような力が加わると、肩から腕へ向かう神経の束である腕神経叢が傷むことがあります。また、腕や肘、手首への打撃や圧迫によって末梢神経が損傷し、手指の感覚や動きに影響する場合もあります。
手首や指のけがによる痛み・腫れ
衝突時に手をつく、手首をひねる、物にぶつけるなどして、骨折や靱帯・腱の損傷が起こる場合があります。神経の障害がなくても、痛みや腫れのために十分な力で握れないことがあります。軽い捻挫と思っていても骨折が隠れている場合があるため、診察が必要です。
握る力だけでなく、指を曲げ伸ばしできるか、感覚に左右差がないか、首や腕に痛みがないかも診断の手がかりになります。無理に強く握ったり、重い物を持ったりして状態を確かめることは避けてください。
物を持ち続けにくい・落とす
コップやかばんを持ち続けられない、握っているつもりでも物を落とすなどの変化がみられる場合があります。痛くて手を離してしまうのか、痛みがなくても力が抜けるのかを、診察時に具体的に伝えましょう。
手指のしびれや感覚の鈍さ
指先がピリピリする、触れた感覚がわかりにくいなどの症状を伴う場合があります。しびれる指や範囲は原因を見分ける参考になりますが、その場所だけで神経の損傷部位を確定することはできません。
指先の細かい動作がしづらい
ボタンを留める、箸を使う、小さな物をつまむといった動作が難しくなる場合があります。これらは握力の数値だけでは捉えにくい変化です。事故前にはできていた動作がしにくくなった場合は、医師に伝えてください。
手首や指の痛み・腫れを伴う
握ると手首が痛む、指が腫れて曲げにくい、特定の場所を押すと強く痛む場合は、局所のけがも考えます。初回の検査では骨折がわかりにくいこともあるため、痛みや握りにくさが続く場合は再度の診察を受けましょう。
直ちに受診が必要な変化
事故後に手や腕が急に動かせなくなった、脱力が広がる、足も動かしにくい、歩けない、排尿・排便に異常が出た場合は、重い神経障害の可能性があります。ろれつが回らない、顔の片側が動かしにくい、意識がおかしい場合も緊急の評価が必要です。通常の予約や施術を待たず、119番で救急車を要請し、首や体を無理に動かさないでください。