バレリュー症候群(バレー・リュー症候群)は、首の痛みに加え、頭痛やめまい、耳鳴りなどがみられる状態を説明する際に使われてきた名称です。交通事故後のむち打ちに伴う症状として紹介されることもあります。
かつては、首の交感神経への刺激によって血流が変化し、さまざまな症状が起こると説明されていました。しかし、この仕組みを裏づける十分な根拠はなく、現在、確立した原因説明として扱うことはできません。
一方、事故後に頭痛やめまい、耳鳴りなどの不調が起こることはあり、症状そのものを否定するものではありません。「自律神経の乱れ」と一括りにせず、頭部のけがや耳の病気など、症状ごとに原因を確認することが大切です。
まずは事故後の診療を受けた医療機関に相談し、必要に応じて脳神経外科、脳神経内科、耳鼻咽喉科などで評価を受けましょう。画像検査で異常が見つからないことだけを理由に、バレリュー症候群と判断することはできません。
頭痛・めまい・耳鳴りなどは、さまざまな病気やけがで起こる症状です。事故後に首の痛みと同時に現れた場合でも、すべてが首の交感神経の異常によるものとは限りません。
首周囲の損傷と痛み
衝突によって首の筋肉や靱帯などに負担がかかると、首から肩にかけての痛みやこわばりが生じます。頭痛を伴う場合もありますが、首の痛みがあることだけで、めまいや耳鳴りまで同じ原因と判断することはできません。
頭部への衝撃や脳振盪
事故による頭部への衝撃では、脳振盪などに伴って頭痛、めまい、吐き気、集中しにくさなどが現れる場合があります。意識を失っていなくても起こることがあるため、事故時の記憶や、その後の体調の変化も医師に伝える必要があります。
耳の平衡機能や片頭痛など
めまいには、内耳の平衡機能に関わる病気や片頭痛などが関係する場合があります。頭の向きを変えると起こるめまいでも、首そのものが原因とは限りません。めまいの続く時間や誘発される動作、聞こえの変化などを確認します。
痛みや睡眠の問題などが重なる場合
事故後には、痛みによる睡眠の妨げや疲れ、不安などが重なり、日常生活の負担が大きくなることがあります。体のけがや病気を確認するとともに、睡眠や生活への影響にも対応することが大切です。検査で異常がないことだけで、心理的な原因と決めつけることはできません。
以下の症状は、この名称で説明されることがありますが、いずれもバレリュー症候群だけに特有のものではありません。症状の組み合わせだけで診断せず、始まった時期や経過を確認することが重要です。
首の痛みや頭痛
首や肩の張りとともに、後頭部などに痛みを感じることがあります。どこが痛むか、どのような痛みか、首の動きと関係するかを伝えましょう。事故後に続く頭痛や、次第に強くなる頭痛は、再度の診察が必要です。
めまいやふらつき、吐き気
周囲が回る感じ、体が浮くような感じ、歩くとふらつくなど、めまいの感じ方はさまざまです。吐き気を伴う場合もあります。転倒や事故を避けるため、症状がある間は運転や高所での作業を控え、医療機関に相談してください。
耳鳴りや聞こえの変化
耳鳴りや耳が詰まる感じなどを訴える場合があります。左右どちらに起こるか、聞こえにくさを伴うかを確認することが大切です。特に、急に聞こえが悪くなった場合は、首の不調の一部と考えて様子を見ず、早急に耳鼻咽喉科を受診してください。
疲れやすさや集中しにくさ
頭痛やめまいなどとともに、疲れやすい、眠りにくい、仕事や家事に集中しづらいと感じる場合があります。これらも原因を特定する症状ではありませんが、生活への影響を把握するために、診察時に伝えてください。
直ちに受診が必要な変化
突然の激しい頭痛、繰り返す嘔吐、意識がぼんやりする、ろれつが回らない、物が二重に見える、手足に力が入らない、立てないほどのふらつきがある場合は、頭蓋内の出血や脳血管の異常なども考える必要があります。バレリュー症候群やむち打ちの症状と自己判断せず、施術や通常の予約を待たずに119番で救急車を要請してください。